Steampunk Reloaded
SFマガジン2010年6月号の特集は「スチームパンク・リローデッド」と題して、現在英米で再評価の進むスチームパンクを取り上げている。
小川隆が、この特集を解説している文章の中で、最近英米で開かれた様々なスチームパンク関連イベントを紹介しているが、中でもわざわざパンフレットの写真が載せられている、 2009年10月から2010年2月までオックスフォード科学史博物館で開催されたスチームパンク特別展の映像を以下に貼り付けておく。
4分ちょうどに出てくる日本製のスチームパンク腕時計、キュレーターのおじさんは作者の名前を言ってくれてるのだが、まったく日本人の名前に聞こえないヘンチクリンな発音で、なんて言ってるのかよくわからない。が、検索の結果、「末吉晴男時計工房」のものだということがわかった(よくよく聞けば「ハルオ・スェキチ」と確かに言ってる)。一点もので、販売開始とともにあっという間に売れてしまうらしいが、いったい、いくらくらいするものなのだろうか。
特集の最後に掲載されている「スチームパンク・ブックガイド」(選者は卯月鮎、尾之上俊彦、柏崎玲央奈、三村美衣)と、ブライアン・スラタリーのコラム「スチームパンクのサウンドトラックって何?」の中で引用されている、英SF評論誌「マトリックス・オンライン」の記事にある「スチームパンク・バンド」のリストを、以下にまとめてみた。ブックガイドの各ページには、Amazon、Yahooでの検索結果を、サウンドトラックの方には、Discogs、YouTube、Amazonでの検索結果を、それぞれ載せてある。
ブックガイドのセレクトは、万人が認める無難なものになっていると思う。
しかしサウンドトラックの方には、みずから「スチームパンク」を標榜しているバンドもあれば、そのラベルを使おうとしないバンドも混じっていて、「マトリックス・オンライン」の「この連中ならスチームパンク・バンドと考えて問題ない」との主張はちょっと苦しい。曲も、知らないミュージシャンが多くて一概に決めつけられないが、YouTubeの検索結果をチェックした限りでは「うーん、どうだろう」という感じのものが多かった。前述のコラムでも、スラタリーは以下のように述べている。
個人的には、アブニー・パークのサウンドはたしかにおもしろい実験だとは思うものの、それが成功しているかどうかとなると、いまひとつわからない
私もまったく同意見。どちらかというとスチームパンクっぽくないバンド、The Decemberists や The Birthday Massacre の方が断然いいと思った。
バンドのセレクトはリストどおりだが選曲は適当。ただ、Discogsで見つけた「An Age Remembered - A Steampunk / Neo-Victorian Old World Mix」を参考にはした。どうやらこれは、DJ FACT.50を名乗るアメリカ人のおっさんが、自分のお気に入りの曲を集めた、いわば「ラベルに『まい・ふぇいばりっと・そんぐず』ってインレタを貼ったカセット・テープ」的なものを勝手にリリースした上に(Discogsには「File, MP3, Compilation, Unofficial Release」とある)、ついでにDiscogsにも登録しちゃったものみたいだが、まさにこの特集のために作られたようなアンソロジーとなっている。
Book Guide
# | 書名 | 著者 | 出版社 |
---|---|---|---|
SteampunkBookGuide/1 | 海底二万里 | ジュール・ヴェルヌ | 創元SF文庫 |
SteampunkBookGuide/2 | タイム・マシン | H・G・ウエルズ | ハヤカワ文庫SF |
SteampunkBookGuide/3 | ウィンターズ・テイル | マーク・ヘルプリン | ハヤカワ文庫FT |
SteampunkBookGuide/4 | アヌビスの門 | ティム・パワーズ | ハヤカワ文庫FT |
SteampunkBookGuide/5 | 悪魔の機械 | K・W・ジーター | ハヤカワ文庫FT |
SteampunkBookGuide/6 | ディファレンス・エンジン | ウィリアム・ギブスン&ブルース・スターリング | ハヤカワ文庫SF |
SteampunkBookGuide/7 | ドラキュラ紀元 | キム・ニューマン | 創元推理文庫 |
SteampunkBookGuide/8 | 奇術師 | クリストファー・プリースト | ハヤカワ文庫FT プラチナ・ファンタジイ |
SteampunkBookGuide/9 | 黄金の羅針盤 | フィリップ・プルマン | 新潮文庫 |
SteampunkBookGuide/10 | ダイヤモンド・エイジ | ニール・スティーヴンスン | ハヤカワ文庫SF |
SteampunkBookGuide/11 | ネバーウェア | ニール・ゲイマン | インターブックス |
SteampunkBookGuide/12 | 錬金術師の魔砲 | J・グレゴリイ・キイズ | ハヤカワ文庫FT |
SteampunkBookGuide/13 | リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン | アラン・ムーア&ケビン・オニール | JIVE AMERICAN COMICS シリーズ |
SteampunkBookGuide/14 | ペルディード・ストリート・ステーション | チャイナ・ミエヴィル | 早川書房 プラチナ・ファンタジイ |
SteampunkBookGuide/15 | 移動都市 | フィリップ・リーヴ | 創元SF文庫 |
SteampunkBookGuide/16 | クリスタル・レイン | トバイアス・S・バッケル | ハヤカワ文庫SF |
SteampunkBookGuide/17 | モリー・テンプラーと蒼穹の飛行艦 | スティーブン・ハント | エンターブレイン |
SteampunkBookGuide/18 | ユゴーの不思議な発明 | ブライアン・セルズニック | アスペクト |
Soundtrack
# | Artist | Track | Album | Label | Year |
---|---|---|---|---|---|
SteampunkSoundtrack/1 | Abney Park | Airship Pirate | Lost Horizons | Post-Apocalypse Records | 2008 |
SteampunkSoundtrack/2 | Vernian Process | Behold The Machine | Behold The Machine | Not on Label | 2009 |
SteampunkSoundtrack/3 | Unextraordinary Gentlemen | Mr. Soot's Little Black Book | 5 Tales From God-Only-Knows | Not on Label | 2007 |
SteampunkSoundtrack/4 | Vagabond Opera | Milord | The Zeitgeist Beckons | Vagabond Opera | 2009 |
SteampunkSoundtrack/5 | Rasputina | The New Zero | How We Quit The Forest | Columbia | 1998 |
SteampunkSoundtrack/6 | The Peculiar Pretzelmen | Gone To Jericho | Uncanny Eyes | The Peculiar Pretzelmen | 2007 |
SteampunkSoundtrack/7 | Skeleton Key | The World's Most Famous Undertaker | Fantastic Spikes Through Balloon | Capitol Records | 1997 |
SteampunkSoundtrack/8 | The Decemberists | The Hazards Of Love | The Hazards Of Love | Capitol Records | 2009 |
SteampunkSoundtrack/9 | The Birthday Massacre | Looking Glass | Looking Glass | Metropolis | 2008 |
SteampunkSoundtrack/10 | The Dresden Dolls | Coin-Operated Boy | The Dresden Dolls | 8ft. Records | 2003 |
SteampunkSoundtrack/11 | Johnny Hollow | Alchemy | Dirty Hands | Orange Record Label | 2008 |
SteampunkSoundtrack/12 | Beat Circus | Boy From Black Mountain | Boy From Black Mountain | Cuneiform Records | 2009 |
SteampunkSoundtrack/13 | Bat For Lashes | Horse And I | Fur and Gold | Echo | 2006 |