日記/2010-9-2
遍在するバカボン
まず、百田尚樹「永遠の0」を読了。
主人公は、零戦パイロットだった祖父のことを調べていくうちに、戦時中「桜花」の搭乗員だった老人と出会う。
「桜花」は、1トン爆弾にロケットエンジンと翼を取り付けた、一種の誘導ミサイル。ただし誘導装置はついておらず、かわりに人間が操縦する。爆撃機に載せて運ばれ、上空で切り離してロケットエンジンで加速、滑空して敵艦に操縦者もろとも突撃する特攻兵器なのである。
特攻要員となりながら出撃することなく生きながらえたその老人は、終戦後二度と「桜花」を目にすることもなく、また、見たいとも思っていなかった。
「ところが、十年前、偶然に桜花を見ました。アメリカに旅行に行った時、スミソニアン博物館で目にしたのです。桜花は天井から吊されていました。あまりの小ささに驚いたのを覚えています。そしてそれ以上に衝撃的だったのは、そこに付けられていた名前です。何と書かれていたかわかりますか――バカボムです」 「バカボン――?」 姉は聞き返した。 「BAKA-BOMB、すなわちバカ爆弾です。私は息子夫婦が隣にいるにもかかわらず、声を上げて泣きました。悔しくて、情けなくて――いくら泣いても涙が止まりませんでした。しかし本当のところは、『BAKA』そのものずばりだったのです。すべての特攻作戦そのものが、狂った軍隊が考えた史上最大の『バカ作戦』だったのです。しかしそれだけで泣いたのではありません。そんなバカ作戦で死んでいった高橋たちが、ただただ、哀れで、哀れで、涙が止まらなかったのです」
次に、笹公人と和田誠の連句をまとめた「連句遊戯」を読了。
以下、闇汁の巻の一節。
卒論はバカボンパパの論理学 ニャロメに教える恋の数式
「II 解説対談篇」によると、この一節は、直前の「地球儀を回せば吹くやブリザード/こたつでねむる家庭教師よ」を受けてのもので、長句担当は和田誠。
和田 この家庭教師はバカ田大学出身で、バカボンのパパの信奉者です。卒論も「バカボンパパの論理学」を選びました。この深遠なる学問は赤塚漫画を勉強しなければわからないのですが、この男のこの卒論が認められたかどうかは、さだかではありません。
短句担当は笹公人。
笹 男が教えていたのは少年ではなく実は猫でした。バカすぎるからなのか、それとも南国で違法な薬物を使用していたのか、男には猫が少年に見えていたのです。しかもただの猫ではなくニャロメ。急に気が楽になった男は、「恋の数式」を教えてやるといって、自分がモテたという自慢話を延々と聞かせています。
その次に、みうらじゅん「脳内天国 新装版」を読了。
「その壱 菊池エリに会う」は、伝説のM女AV女優「菊池エリ」が六本木のクラブに勤めているという噂を聞きつけたみうらが、彼女に会いに行った顛末を綴ったもの。
思い起こせば10年以上も前、オレは彼女のAV『シスターL』に出会った。修道女役の彼女がヒゲ&サングラスのニクイ奴(中野D児!!)にSM調教を受け、その切なそうな眉間のシワ&自分の意志とは関わりなく巨大に発育してしまった乳房を震わせ、オレを脳内天国に誘い込んだのだ。 それ以来、オレはエリに首ったけ! 彼女の主演するビデオばかりを買い漁り、ビデオデッキには彼女が住みついてしまった。オレは一時期、彼女に似たM女を現実でも探し求めたが、エリの前にエリは無し、エリの後にもエリはいなかった。 オレは今、天才バカボンのオヤジと同じ41歳の春を迎え、子供の頃思ってた“いい大人になったらオナニーはやめるだろう”という予想を打ち破り、堂々!エリにお世話になっている。
みうらが1958年生まれであることから、上の文章が書かれたのは、彼がバカボンのパパと同い年だった1999年であることがわかる。
Wikipediaによると菊池エリは1965年生まれ。1999年当時34歳、2010年現在では45歳であり、すでにバカボンパパより年上である。
以上、読んだ本3冊に続けて「バカボン」という言葉が出てきたという、ただそれだけの話。