日記/2008-7-13
北杜夫の娘は「楡家の人びと」を……
どうして僕はきょうも競馬場に | |
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亀和田武の「どうして僕はきょうも競馬場に」を読了。 一口馬主クラブの会員向け雑誌「My horse」の1999年4月号から2008年2月号までに連載されたエッセイをまとめたもの。こんな風に日本中、世界中の競馬場を旅することができれば。うらやましい限り。
以下、競馬場とは全然関係ない話。
2004年6月号に掲載されたと思われる「斎藤茂吉とサバ折り文ちゃんのブロンズ像 上山、中津」の回に、斎藤茂吉の孫、北杜夫の娘でコラムニストの斎藤由香が登場する。
パーティ会場で彼女と会った亀和田武は、以前彼女が雑誌の企画で父親といっしょに上山競馬場へ行ったことを思い出し、そのとき上山城へ行ったかどうか、たずねる。
「あのとき、上山城って、行った?」 「お城なんて、行きません」 私はやや憮然とした面持ちになる。 「上山城にはね、キミのお祖父さんの等身大のブロンズ像があるんだよ」 「そんなあ、知りませんよ」 北杜夫の父は大歌人の斎藤茂吉だ。彼女の祖父にあたる茂吉は上山近郊の出身で、 郷土の偉人としてブロンズ像が建立されているのに、ああ、この不肖の孫娘は、 それも知らないとは。 「じゃあ、文ちゃんの像が、あることも知らないよね」 「ブンちゃんって、それ、誰ですか」 「誰って、出羽ヶ嶽文治郎って力士」
茂吉同様上山近郊出身の出羽ヶ嶽文治郎は、得意技のサバ折りで看板力士を廃業に追い込んでしまったためにこれを禁じ手にされ、大成できなかったという悲劇のヒーロー(ただし、この禁じ手の話はWikipediaのエントリには記載がない)。色川武大の傑作「怪しい来客簿」の「サバ折り文ちゃん」は彼のことを描いた短編。
「キミのお祖父さんの茂吉とは、兄弟のように育てられた人なんだよ、文ちゃんは。 お父さんの『楡家の人びと』にも出てきただろう?」 「父の本って、読まないんです。だって、つまらないんですもの」
亀和田武は、上山の誇りである斎藤家から、上山の記憶、文ちゃんの記憶が消え去っていくことを嘆くのだが、私が驚いたのは、北杜夫の娘が「楡家の人びと」を読んでないという事実!
ホント?
冗談でしょ?
大丈夫?
斎藤由香は2008年2月に「猛女とよばれた淑女―祖母・齋藤輝子の生き方」という本を上梓している。この本を読む気が全くしないので確認のしようもないが、こんな本書くんだから、さすがに読んだでしょ、「楡家の人びと」。あと「母の影」も。
果たして、彼女には「楡家の人びと」が面白かったのか、どうなのか、ぜひ感想を聞いてみたい。
楡家の人びと(上巻)改版 | |
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Amazonの書影が大昔私が手にしたものそのまま。懐かしい。
追記
「斎藤由香 楡家の人びと」で検索してこちらのページを発見。
読むには読んだようだが、感想は書いてない(「初めて知った事実がたくさんありました」とあるくらい)。
でも、これを読んで、まあ、家族に迷惑かけ放題の躁鬱病の父親が書いた本なんか読みたかねえか……と少し反省。