イメージの連鎖方式デジタル感覚SF読書ガイド

　スターログ1980年10月号に掲載されているブックガイドをリストに、またそこに掲載されているチャートを強引に復元してみた。
　特集「1980:A SPACE ODYSSEY」の第2の記事として、表紙には「"SFする！"趣味別実用版ビジュアル・ブック・ガイド100」とあるこのガイド。しかし実際の記事としてのタイトルは「80年代ビジュアル・エイジに贈る イメージの連鎖方式デジタル感覚SF読書ガイド」となっている。
　構成は、伊藤典夫、鏡明、川又千秋、井口健二、白川星紀の面々。
　30年以上前のセレクトなので確かに古臭い感じもするが、その一方オールタイムベスト級の作品もバンバン入ってるので、いまでもそこそこ通用するリストに仕上がっていると思う。

　「スタート前のガイダンス」から少し引用する。

テクノロジーの進歩のおかげで、SF小説のイメージ世界をスクリーンに投影することは、今日しだいに不可能ではなくなってきている。だが最良のSF小説を、満足ゆくまでにフィルムに再現するには、まだまだ日がかかるだろう。というわけで考え出されたのが、イメージ連鎖方式によるSF読書ガイドである。
　例えばSWのシナリオ第三稿には、テルミナスという惑星の名があり、映画ではC-3POが「スパイス農場」という言葉を使う。ところがテルミナスは、アシモフの『銀河帝国の興亡』に登場する惑星、スパイスはもちろんハーバートの『デューン砂の惑星』の産物。ジョージ・ルーカスは明らかにこの二作を下敷きにしており、読むとまさしくSWのイメージ世界につながるものが見つかるというわけだ。

　また、ブックガイドの冒頭にはこうある。

★読書の出発点は、"スター・ウォーズ"、"未知との遭遇"、"2001年宇宙の旅"、"スター・トレック"、"キング・コング"、の中から、自分の好きな映画を選んでスタートすること。以後は矢印の方向に読み進めれば、各作品に共通するイメージに沿ってSFの世界を探検できます。

　途中、以下のような注意書きも。

★このガイドは小説だけではなく、映画も漫画も含めてSF的なイメージの流れに従って構成してあります。

　以下にその「イメージの連鎖方式」のチャートを、Graphvizのdotで表現してみた。チャートの形は雑誌に掲載されているものとは全然違うものとなっているが、ノード間の接続は同じになっている。各ノードは、チャートの下に表示されているリストの各ページへのリンクになっており、各々のページには、AmazonおよびYahooでの検索結果が表示されている。

　表紙に書かれている見出しからもわかるように、今や誰もそんなことは気にしていない「ヤマト、ガンダム、コナンはSFなのか？」（ここでいう「コナン」はもちろん「名探偵」ではなく「未来少年」の方）なんてことが大真面目に議論されていた時代。SFマニアの狭量なセクショナリズムと言ってしまえばそれまでだが、それだけ「SF」が大事にされていたとも言える。そういう時代の「SF的なイメージの流れ」が下記のチャートから汲み取れるだろうか。
　なお、このチャートは、dotからSVGに変換してHTMLに埋め込んでいるのだが、Firefox4やChrome11では描画できたが、IE9では描画できないようだ。